「カタンを勧めたのに、友達が二度と遊んでくれなくなった」経験はありませんか?
ボードゲームの中でも特に知名度の高いカタンですが、遊んだ人の感想は大きく二つに分かれます。「最初に遊んだゲームがカタンで、めちゃくちゃ面白くて何度もやった」という人がいる一方で、「カタンをやったけど、ずっと指図されて全然楽しくなかった。ボードゲームって自分には合わないかも」という人もいる。
ボードゲーマーの間でも「カタンが初心者にもお勧めできるのか否か」で度々議論が起こります。
同じゲームなのに、なぜこんなに評価が違うのか。
答えはシンプルで、カタンの面白さはインスト(ルール説明)の質に大きく左右されるゲームだからです。カタンが向かなかったんじゃなくて、インストが向かなかった。そう言い換えてもいいかもしれません。
だとすれば、インストする側が少し考え方を変えるだけで、テーブルを囲む全員の体験が変わります。この記事では、カタンで遊び終わったときに「面白かった!また遊びたい!で終わる」をゴールにするためのインストの考え方と具体的な方法をまとめます。
カタンのインストを成功させる3つのTIPS
カタンのインストがうまくいかないとき、多くの場合は原因が共通しています。ルールの正確さより先に、この3つのコツ(TIPS)を意識するだけでゲーム体験が大きく変わります。
TIPS①「楽しさ」を最初の一言で伝える
ルールの説明を始める前に、このゲームで何が楽しいのかを一言で伝えましょう。
「資源を集めて島を開拓するゲームです。自分だけでは必要な資源が揃わないので、他のプレイヤーと交換しながら進めます。その駆け引きが一番盛り上がります!」
ゴールが見えている学習者と見えていない学習者では、同じ説明を聞いても理解度がまるで違います。最初の一言がインスト全体の地図になります。
TIPS②ルールは「必要になった瞬間」に教える
全部のルールを説明してからゲームを始めようとすると、初心者の頭はパンクします。人は実際に場面に直面したときに一番よく覚えます。
最初に伝えるのは「勝利条件」と「1ターンの流れ」だけに絞り、港や盗賊のルールはその場面が来たときに一言添えれば十分です。ゲームを動かしながら教えることで、説明とプレイが自然につながっていきます。
TIPS③資源カードは見せながら最初の1ゲームを楽しむ
初めてカタンを遊ぶときは、資源カードをオープンにしたまま1ゲーム通して遊んでみましょう。「誰が何を持っているか」が見える状態の方が、交渉の流れや資源の動きが直感的に理解しやすくなります。
ただし、2回目からは手札を隠して遊ぶことを最初に伝えておくのが大切です。
「今日は最初だから手札見せながらやってみよう。次回からは隠してやるともっと駆け引きが面白くなるよ!」
この一言があるかないかで大きく違います。1回目を「体験版」として位置づけ、2回目からが本番、という流れを最初に共有しておきましょう。
カタンというゲームの本質=「何を楽しむゲームか」を理解する
最初の楽しさは「増えていく感覚」でいい
カタンを初めて遊ぶ人が感じる最初の楽しさは、じつにシンプルです。サイコロを振るたびに資源が手に入って、道が伸びて、集落が建っていく。「自分のものが増えていく感覚」って、理屈抜きに楽しいんですよね。
難しいことを考えなくても楽しめる。これがカタンの入口の広さの秘密です。
でも必ず「あれ、詰まった」ってなる
ところがゲームを進めると、こんな瞬間が必ずやってきます。
次に何を建てればいいかはわかってる。でも資源が足りない。サイコロを振っても振っても、欲しいものが出てこない——。
「あれ、このゲームって運ゲーなの?」と思ったりもするんですが、実はこれ、ちゃんと意図して設計されているんです。カタンは、どれだけ良い場所に入植しても、必要な資源が自分だけでは絶対に揃わないようになっています。「欠乏」はバグじゃなくて、仕様です。
詰まったときこそ、カタンが始まる
この「足りない!」という感覚が、自然とこんな言葉を引き出します。
「ねえ、木余ってるんだけど鉄と交換しない?」
この一言が出た瞬間、そのプレイヤーはカタンの本質に足を踏み入れています。交渉って、上手い人だけがやるテクニックじゃない。リソースを集めようとすれば、自然と交渉したくなるように設計されているんです。
そして交渉が成立して、止まっていた開拓がまた動き出す。「増えていく感覚」が戻ってくる。この欠乏→交渉→達成のループこそが、カタンの楽しさの正体です。
インストで伝えるべきことはここにある
だから、ルール説明の前にこの一言を添えるだけで、ゲーム体験ががらっと変わります。
「資源を集めて島を開拓していくゲームです。ただ、自分だけで全部の資源を揃えるのはほぼ無理なので、他のプレイヤーと交換しながら進めていきます。その交換の駆け引きが、このゲームで一番盛り上がるところです!」
「交渉ゲームです」と最初に言うより、「増えていく楽しさ」の先に交渉があると伝える。この順番ひとつで、初めてカタンを遊ぶ人の体験が変わります。
交渉の実践——初心者も経験者も楽しめる場をつくるために
カタンの交渉には、ひとつ覚えておくと場がぐっと動きやすくなる原則があります。
一対一の交渉は、基本的に合意した方がその後が楽になりやすい。
なぜか。カタンの交渉は奪い合いではなく、お互いに「持っていないもの」を補い合う行為だからです。合意すれば両者ともに前進できる。断り続けると、自分も相手も止まったままになるだけでなく、断られた相手は次から交渉を持ちかけにくくなります。結果として、テーブル全体の交渉の流れが止まっていく。
「少し損かな」と思う交渉でも、動いた方が長期的には選択肢が広がります。
インストする側はこの原則を念頭に置いて交渉を促しましょう。そして参加者にも一言伝えておくと、初心者が「断っていいのか、乗っていいのかわからない」という迷いから解放されます。
「カタンの交渉は奪い合いじゃないので、一対一で持ちかけられたら基本的に乗っちゃった方がお互い得ですよ。断るのはもちろん自由ですが、動いた方がゲームが面白くなります!」
まず「交渉していいんだ」と思わせる
初心者が交渉をためらう一番の理由は、「迷惑じゃないかな」「変な取引だと思われないかな」という遠慮です。だからインストする側がゲーム開始直後に最初の交渉のお手本を見せるのが効果的です。
「あ、誰か木持ってない?レンガと交換したいんだけど」
これだけで「あ、こういうノリでいいんだ」という空気が生まれます。初心者は交渉のルールを頭で理解するより、やっているのを見て感覚をつかむ方がずっと早い。インストする側が最初に場の空気をつくることが、初心者の交渉デビューを後押しします。
初交渉の始め方3ステップ
自分で交渉を始めるための最低限の型を、ゲーム前に一言添えておくと安心感が違います。
ステップ1:何が欲しいかを声に出す 「レンガがあと1枚あれば道が建てられるのに…」とつぶやくだけでもOK。相手が反応してくれます。
ステップ2:何が余っているかを伝える 「木が2枚余ってるんだけど、誰か要る人いない?」自分の手持ちを開示することで交渉が始まります。
ステップ3:断られても気にしない 断られるのは普通のことで、相手にも事情があります。「そっか〜、じゃあ他に誰か〜」と流せる空気をインスト側が先に作っておきましょう。
交渉で避けたいNG行動
初心者・経験者混在の場でゲームが盛り下がるのは、多くの場合このどれかが原因です。実際にゲームのインストをする際には「今回は初めての方がいるので経験者の方は初めての方のケアも意識していただきたいです」と伝えておき、経験者の人にも場作りに加わってもらえるよう工夫しましょう。
NG①初心者に「その交渉は損だよ」と言う
損得の話をされると、初心者は「正解を探さないといけない」モードになり、交渉が怖くなります。損な交渉も含めて経験です。よほどのことがない限り口を出さない。
NG②経験者同士だけで交渉が完結する
初心者が「自分には声がかからないな」と感じた瞬間、ゲームから気持ちが離れます。インスト側は意識的に初心者に交渉を振りましょう。
NG③交渉を「指示」にしてしまう
「今は鉄を集めた方がいいよ」「それより小麦を交換してもらいな」は交渉ではなく指図です。アドバイスは求められたときだけ。
立場別:場を設計するコツ
トッププレイヤーとの交渉
トッププレイヤーが強くなりすぎると、他のプレイヤーが「もう勝てないな」と感じてゲームへの興味を失います。インストする側がここで自然に動けると場が締まります。
「○○さんが点数伸びてきたね。誰か一緒に止めない?」
この一言を場に投げるだけで、他のプレイヤーを巻き込んだ交渉が生まれます。特定の誰かを攻撃するのではなく「ゲームとして面白い展開にする」というフレーミングで伝えるのがポイントです。
最下位プレイヤーとの交渉
最下位のプレイヤー、特に初回プレイの人は「自分だけ取り残されている」と感じやすい状況です。ここでインストする側から積極的に交渉を仕掛けていきましょう。
「ねえ、○○さんって小麦余ってない?こっちレンガあるから交換しない?」
声をかけること自体が「あなたはゲームの中にいる」というメッセージになります。最下位プレイヤーへの交渉はゲームの勝ち負けより、その人がゲームに参加できている感覚を作ることが目的です。
初心者との交渉
初心者は「変な交渉をして笑われないか」という不安を抱えていることが多い。だからインストする側が初心者から断られても明るく流せる空気を先に作ることが大切です。
「鉄と木、交換しない?——あ、いらない?了解〜!じゃあ誰か他にいる?」
断られても平然としているのを見せることで、初心者は「断ってもいいんだ」「交渉って気軽なものなんだ」と学びます。
共通して大切なこと:正解を教えない
どの立場の相手と交渉するときも、インストする側が「その交渉は損だよ」「今は鉄より小麦の方がいい」と口を出すのは禁物です。正解を与え続けると、プレイヤーは自分で考えることをやめ、気づけば「言われた通りに動くコマ」になってしまいます。
失敗も含めて自分で動いてみること。それがカタンへの理解と愛着につながります。インストする側の役割は「正解を教える先生」ではなく、「全員が自分でゲームを楽しめる場を整える設計者」です。
実践:カタンのインスト手順ステップガイド
カタンのインストで一番大事なことから順に押さえていきましょう。ルールを全部完璧に伝えることより、全員がゲームに前向きな状態でスタートできることを最優先に考えます。
STEP1:メンバーを把握して場を設計する(ゲーム前)
インストが始まる前に、今日のメンバー構成を確認しましょう。カタンは混在しているプレイヤーの経験値によって、インストの設計が変わります。
まず経験者に一言お願いしておきます。
「今日初めての人もいるから、交渉するときに理由をちょっと声に出してくれると助かる。あと正解を教えるのはなしで!」
これだけで経験者が「サポート役」に回る意識が生まれます。初心者には逆に一言添えます。
「わからないことがあればその都度説明するから、とりあえず気軽にやってみよう!」
STEP2:楽しさを一言で伝える(ルール説明の前)
ルールの説明を始める前に、必ずこの一言から入ります。
「資源を集めて島を開拓するゲームです。自分だけでは資源が揃わないので、みんなと交換しながら進めます。その駆け引きが一番盛り上がります!」
ここを省略してルールから入ると、初心者は「何のためにこれを聞いているのか」がわからないまま情報を受け取ることになります。最初の一言がインスト全体の地図になります。
STEP3:ルールは3段階に分けて伝える
一度に全部説明しようとしないことが鉄則です。「今動くために必要なこと」だけを段階的に伝えます。
第1段階:ゲームを始める前に伝えること
「10点取ったら勝ち。道・集落・都市を建てると点数になります。まずサイコロを振って資源をもらうところから始めましょう」
勝利条件と1ターンの流れだけ。これ以上は不要です。
第2段階:最初のターンが終わったら伝えること
交渉のやり方をここで初めて説明します。実際に手札が見えた状態で話す方が、初心者の頭に入りやすくなります。
「ここから他のプレイヤーと資源を交換できます。一対一の交渉は基本的に乗っちゃった方がお互い得なので、積極的にどうぞ!」
第3段階:その場面が来たときに伝えること
港・盗賊・騎士カードなどは、実際にその状況になったときに一言添えれば十分です。事前に説明しても忘れてしまいます。
「あ、今盗賊が出たね。これはね……」
STEP4:最初の数ターンはインスト側が交渉の火付け役になる
ルール説明が終わってゲームが始まったら、インスト側の仕事はまだ続きます。最初の数ターンで積極的に交渉を仕掛けて、テーブルに「交渉していいんだ」という空気をつくりましょう。
最初の交渉が成立したタイミングで一言添えると効果的です。
「いいね!こうやって交換しながら進めていくのがカタンの醍醐味なんですよ」
これ以降は余計な解説不要。あとはゲームが勝手に教えてくれます。
まとめ——インストはゲーム体験のデザインである
カタンは「インストが難しいゲーム」ではありません。「インストの質がそのままゲーム体験の質になるゲーム」です。
ルールを正確に伝えることはもちろん大切です。でもそれ以上に大切なのは、テーブルを囲む全員が「欠乏→交渉→達成」のループに乗れる場をつくること。初心者が交渉に踏み出せる空気をつくること。経験者が場を支配しすぎないよう自然にバランスをとること。
インストに失敗したとき、「カタンが向かない人だったな」と思うのは簡単です。でも多くの場合、その人はカタンが向かなかったんじゃなくて、カタンの面白さに出会えなかっただけかもしれない。
最高のインストとは、ルールを教えることではなく、「面白い」を設計することだ。
さて、あなたのインストは、ルール説明ですか?それとも、体験のデザインですか?

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