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このサイトは、ボードゲームを遊ぶ時のインスト(インストラクション)についてまとめていきます。特にボードゲームに不慣れな方やあまり相手のことがわからない時にどのように遊ぶことでボードゲームがより楽しめるかを考えることに主眼が置かれていると考えます。

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【ボードゲーム】うまいインストには、仕組みがある

ボードゲームの説明を「観察・整理・組み立て・届ける」で考える

ルールは、ひととおり説明した。

でも、いざ遊び始めると、初心者の手が止まる。

「で、何をすればいいんですか?」と聞かれる。

説明したはずなのに、と思いながら、もう一度同じことを言い直す。

僕は何度も、この場面を味わってきました。

ゲーム会を主催していたころも、子どもに新しいゲームを教えるときも、同じでした。失敗しないように、できるだけ全部説明しようとする。勝利条件も、例外処理も、細かい注意点も、漏らさず伝えようとする。

でも、説明が長くなるほど、初心者の表情は少しずつ固くなっていきます。こちらは丁寧に伝えているつもりなのに、相手は「まだ始まらないのかな」という顔になる。そして、ようやくゲームが始まると、最初の手番で止まる。

そこでやっと気づきました。足りなかったのは、ルールの量ではありません。最初に、どこを見ればいいかでした。

このブログでは、インストを「うまく話す技術」だけではなく、「遊び始めるための設計」として考えます。どのルールを先に見せるか。どの情報を後回しにするか。どこで見本を入れるか。どんな視点を渡すか。その積み重ねで、初心者の最初の一手は変わります。

その経験から、僕はインストを4つの言葉で考えるようになりました。

  • 観察とは、初心者が止まりそうな場所を、先に見つけること。
  • 整理とは、今話すルールと、あとでよいルールを分けること。
  • 組み立てるとは、ルールブックの順番ではなく、理解の順番に並べ替えること。
  • 届けるとは、正解ではなく、見る場所を渡すこと。

この4つを順番に見ていきます。

目次

全部話しても、初心者は遊びやすくならない

インストが苦手だと感じるとき、最初に襲ってくるのは「言い忘れたらどうしよう」という不安だと思います。

このルールを言い忘れたら。

例外処理を伝え忘れたら。

あとから「聞いていない」と言われたら。

そう考えると、最初から全部話したくなる。昔の僕もそうでした。勝利条件、手番の流れ、得点方法、特殊カード、例外処理、終了条件。ルールブックの順番どおりに、できるだけ並べようとしていました。

ところが初心者の側は、まだ盤面も見えていません。手番で何をするのかも、どの情報が大事なのかも分かっていない。その状態で細かいルールを聞いても、「大事そうだけど、今はよく分からない情報」として、ほとんど残りません。

必要なのは、完璧な説明ではありません。最初の一手です。

「このゲームでは何を目指すのか」

「自分の手番では何をするのか」

「最初はどこを見ればいいのか」

ここさえ分かれば、プレイヤーはゲームの中に入れます。特殊カードの処理も、終盤の得点計算も、その場面が来てから説明したほうが、むしろ頭に残る。

実際、子どもにゲームを教えるとき、途中から説明をかなり削るようになりました。全部言わずに、まず1手番やらせてみる。困ったところだけ、その場で足す。そのほうが、結果的に早く遊べるようになったからです。

観察|まず見るのは、ルールではなく「迷いそうな場所」

インストを考えるとき、僕が最初に見るのはルール量ではありません。初心者がどこで迷うか、です。

たとえば、選択肢の多いゲーム。「あなたの手番では、何でもできます」と説明したとき、初心者はたいてい固まります。資源を集めるか、カードを取るか、コマを進めるか。選べることが多いほど、それは自由ではなく、迷いとして届きます。

以前、ワーカープレイスメントのゲームを4人で囲んだとき、初心者のひとりが最初の手番で1分以上動けなくなったことがありました。彼女は何もできなかったわけではなく、選択肢が多すぎて「どれを選ぶと損なのか」が分からなかった。あのとき止まっていたのは、ルールではなく、見る場所が決まっていなかったからです。

もう一種類、よくある迷いがあります。目的と行動がつながって見えないときです。今この資源を取ることが、どう得点につながるのか。このカードを買うと、後で何ができるのか。経験者には自然に見えているこのつながりが、初心者にはまだ見えていない。

だからインストの前に、迷いそうな場所を先に探しておきます。

  • 最初の手番で選択肢が多いところ
  • 目的と行動のつながりが見えにくいところ
  • 相手の行動で自分の予定が変わるところ
  • 失敗したときに何が起きるか分かりにくいところ
  • 得点方法が後半まで見えにくいところ

ここを観察しておくと、「何を先に話すべきか」が決まってきます。インストは、説明を始める前に半分決まっている。そう考えるようになりました。

インスト設計の4ステップ。初心者が止まりそうな場所を観察し、今話すルールとあとでよいルールを整理し、理解しやすい順番に組み立て、正解ではなく見る場所を届ける。

整理|ルールを「今いるもの」と「あとでよいもの」に分ける

迷いそうな場所が見えたら、次はルールを整理します。

すべてのルールを同じ重さで扱うと、説明は長くなり、どれが大事なのかが見えなくなる。そこでルールを3つに分けます。

・最初に必要なもの

・1手番やってから分かるもの

・ゲームが進んでから足せばよいもの。

最初に必要なのは、ゲームに入るための情報だけです。

自分の手番でやること、最初に見る場所、最低限の禁止事項、失敗したときに起きること。これが分かれば、プレイヤーは、まず一手動かせます。

逆に、特定のカードだけに関わる処理や、終盤にしか出てこない得点計算は、最初に全部話さなくていい。ここが、昔の僕が一番勘違いしていたところです。大事なルールだから最初に言わなきゃ、と思っていた。でも、大事なルールであることと、最初に説明することは、別の話です。

整理でやりたいのは、ルールを減らすことではありません。必要な順番に並べ替えることです。

たとえば『カルカソンヌ』を教えるとき、得点計算の全パターンを先に説明すると、それだけで初心者は疲れてしまう。だから、「タイルを引いて、道か街をつなげて、コマを置く」という大きな流れだけ先に見せます。細かい点数の数え方は、実際に街が完成した瞬間に、その場で説明する。同じゲームでも、どこから話すかで、入りやすさはまったく変わります。

組み立て|説明の順番を「理解の順番」に並べ替える

ルールブックの順番は、初心者が理解しやすい順番とは違います。

ルールブックは、正確に確認するためのもの。インストは、これから遊ぶ人がゲームに入るためのもの。目的が違えば、並べる順番も変わります。

よく使うのは、この流れです。

  1. このゲームで目指すこと
  2. 自分の手番でできること
  3. 1手番の見本
  4. 最初に見てほしい場所
  5. 1〜2手番やってからの補足

まず「何を目指すゲームか」を伝えると、その後の説明が一本の線でつながります。次に手番でできることを伝えると、「自分が何をするゲームなのか」がつかめる。

ここで効くのが、見本です。言葉で十個説明するより、ひとつ実際に動かして見せたほうが早いことがあります。セットアップを終えて盤面が整った状態で、「たとえば、このコマをここに置くと木材がもらえます」と一度やってみせる。それだけで、プレイヤーは残りの説明を自分の中で置き換えられる。

最後に、見る場所を指定します。「最初はこの3つのアクションだけ見れば大丈夫」「まずは自分の資源と、作れそうなものを見て」。見る場所が定まると、選択肢が多くても、最初の判断をしやすくなります。

すべてを説明しきることより、最初に見る場所を作ること。組み立ての軸は、ここにあります。

届ける|渡すのは、攻略法ではなく視点

初心者に説明していると、つい助言したくなります。「このカードは強いですよ」「この場所、取っておいたほうがいいです」。

そうした助言が役立つ場面はあります。けれど最初から正解を渡しすぎると、プレイヤーが自分で考える余地が消えてしまう。インストで届けたいのは、攻略法ではなく、視点です。

違いは、わずかな言い換えに表れます。

「この場所は全員で取り合います」

「このカードは、他の人も欲しがるかもしれません」

「この資源がなくなると、別の方法を考える必要があります」。

正解を押しつけず、見る場所だけを渡す。プレイヤーはその視点を使って、自分で判断していく。

この差が一番効くのが、インタラクションのあるゲームです。「相手を攻撃できます」とだけ言うと、身構える人がいる。特に、相手を攻撃するような表現が苦手な子に教えるときは、ここを間違えると一気に表情が曇ります。

でも、「このゲームでは、ほかの人の動きで自分の予定が変わることがあるよ」と伝えると、見方が変わる。相手のコマを見て、場のカードを見て、自分の選択を少し変える。攻撃や妨害が「怖いもの」ではなく、「ゲームを面白くする手がかり」に変わるんです。

インタラクションについては、別の記事で詳しく書いています。「強い・弱い」だけで見るのではなく、「どんな関わり方が好きか」で考えると、ゲーム選びもインストもしやすくなります。

攻略の正解は、渡さない。代わりに、どこを見れば分かりやすくなるか。その視点だけを渡す。それが、僕にとっての「届ける」です。

ゲームが変われば、先に見せるものも変わる

ここまでを4つの言葉でまとめると、観察し、整理し、組み立て、届ける、になります。

ただし、4つの中身はゲームごとに変わります。初心者が迷う場所が、ゲームによって違うからです。

『ラブレター』のようにルールが短いゲームは、説明自体はすぐ終わります。けれど面白さの中心は、相手の手札を読む駆け引きにある。だからラブレターの記事では、短いルールをどう説明するかよりも、「情報が少しずつ見えていく面白さ」をどう先に渡すかを中心に書きました。ルールの短さと、入りやすさは別物だからです。

『UMATAKA』のように、資源を集め、探索を進め、土器づくりへつなげていくゲームでは、「ほしいものを選ぶ」前に、何が足りないのかが見える状態をつくることが大切になります。最初から自由に選ばせるより、1〜2手番動かしてから「今、何が足りない?」を一緒に確認したほうが、次の行動が見えやすい。資源と目的のつながりをどう見せるかを、UMATAKAの記事では考えました。

『キャント・ストップ』のようにダイスを振って進むゲームは、確率よりも判断の気持ちよさが中心です。止まるか、もう一回行くか。失敗したとき、何が残って何が消えるのか。キャント・ストップの記事では、白いコマと色のコマの違いを先に見せることで、「失敗しても全部が消えるわけではない」と分かる流れを考えています。リスクと、失敗のあとに残るものを見せる、という設計です。

そして、相手を見る理由そのものを扱うのがインタラクションの話でした。同じ「観察・整理・組み立て・届ける」でも、どこに力を入れるかはゲーム次第。だからインストは毎回、少しだけ設計し直す価値があります。

そもそもインストとは何なのか、という前提の話は「インストってなんだろう」にまとめてあるので、はじめての方はそちらから読んでもらえると、この記事の位置づけも見えやすいと思います。

うまいインストには、仕組みがある

声の出し方も、場の雰囲気づくりも、たしかに大切です。でも、その前に決まるのは、何を見せるか、です。

最初に何を伝え、何を後回しにするか。どこで見本を入れ、いつ補足するか。どこまで助言し、どこからは自分で考えてもらうか。ここを設計しておくと、説明する側も、聞く側も、少し楽になります。

完璧な説明を目指さなくて大丈夫です。すべてのルールを最初に話しきれなくても、プレイヤーが最初の一手を動かせて、少しずつ見方が分かっていけば、それで十分にいいインストです。

ボードゲームは、ルールを覚えるだけの遊びではありません。自分で選び、迷い、試し、誰かの動きを見て、また考える。インストは、その入り口を作る時間です。

そして、入り口の作り方には、ちゃんと仕組みがある。

次に誰かへゲームを説明するとき、「何を話すか」ではなく、「どこを見てもらうか」から少しだけ考えてみる。その小さな違いが、最初の一手を少し軽くしてくれます。

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この記事を書いた人

ボードゲームを遊び始めたのは2015年ごろ。オープン、クローズのどちらのゲーム会も主催した経験があります。その経験の中で、ゲームのインストがうまくいかず悲しい思いをしたので、インストについて意識して勉強しているところです。コメントは歓迎しています。1986年生まれ、男性。札幌在住。妻子あり。

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